2008/01/30

テストまで、残り6日

問い①
・勤労所得以外の資産所得がある場合、そうでない場合よりも、労働供給は、どのように影響されるのか?

勤労所得以外の資産所得は、労働所得の決定に際しては、予算線の上方シフトをさせる効果を持っている。これは、所得効果に対応するから、その分、余暇をより需要し、結果として、労働供給は減少する。

問い②
・課税後の賃金と労働供給(あるいは勤労意欲)の関係が、これまで、わが国で明確でなかったのは、なぜか?

いくら働いて稼いでも、手取り(税引き後)の所得がそれほど変化しないのであれば、あまり働かないだろう。また、表面的な労働時間は同じでも、どれだけ熱心に働くか、労働の質に関しては、税制が影響する可能性は高い。

これまでわが国で、課税による勤労意欲抑制効果が明確に確認されなかったのは、個人個人の業績評価が、会社全体の業績、あるいは、その人が所属するチーム(課や部などの単位)の業績に連動していたからである。

そうしたケースでは、一人一人の勤労意欲は本人の所得と直接対応しない。また、ある企業に定年まで雇用され、年功序列で賃金が上昇すると期待される場合には、その年の手取りの金額はあまり意味を成さない。

したがって、税制が変化して、その年の手取りの収入が変化しても、それが、その年の個々人の勤労意欲に与える効果は希薄になる。


問い③
・わが国で、これから資産課税の強化が望ましいとした時に、具体的に、どのような課税方法が考えられるのか?

相続税の税率を現状以上に高くしても、資産課税の強化にはそれほど、つながらないだろう。なぜなら、金融資産の捕捉が困難だからである。納税者番号制度を導入し、捕捉制度を整えれば、現行の税率でも、かなりの資産課税の強化になろう。土地については、保有の税率、即ち、固定資産税を強化することが有力な案であろう。


問い④
・中長期的な視点で、法人税のあり方を論じよ?

法人所得は個人所得と異なり、景気変動の影響を大きく受ける。ある時期には大きな利益が出るが、別の時期には巨額の損失もありえる。もちろん、中長期的に赤字が続けば、市場から退出せざるを得ないが、短期的な赤字は中長期的には黒字で十分にカバーされるはずである。したがって、法人税の課税ベースは中長期的な所得であるべきだろう。これを可能にするのが、損失の異時点間での相殺である。現在の損失を将来に繰り延べたり、また、過去の利益と相殺できるようにすれば、事実上中長期的な利益に課税することになる。企業は政府よりも、景気変動に対して脆弱である。そのため、景気による税負担の変動を平準化することは、この意味でも望ましい。こうした理解にたつと、欠損金の繰越、繰り延べ、いずれの方向にも大幅に認めるのが、望ましい。


問い⑤
・一般消費税のように、全ての財に一律に課税するケースを、ラムゼイのルールの観点から、評価せよ?

全ての財に一律の財率で課税すると、結局、労働所得に課税して、全ての消費財に非課税の場合と同じになる。なぜなら、労働供給と消費財との相対価格が同じ率で影響されるからである。したがって、もし、ラムゼイのルールが教えるように、労働供給が非弾力的であれば、一律に消費財に課税する一般消費税は、効率性から見て、望ましい。


問い⑥
・累進的な消費財を導入するとすれば、どのような方法が考えられるか?

所得税と同様な直接税として、消費財を考えるものに、支出税がある。これは、消費支出の主体である家計が消費支出額を申告し、その額に応じて累進的に課税するものである。


問い⑦
・消費財率に複数税率を導入することについて、その是非を議論せよ?

将来仮に消費税を10%程度かそれ以上に引き上げる時に、公平性を重視する立場から、低所得者の負担増に配慮して、例えば、生活必需品を限定して、消費税率を0%にするとか、あるいは、軽減税率を適用するという主張が複数税率の議論である。

しかし、こうした手法には問題点も多い。

そのような複数税率を導入すれば、消費税の徴税手続きが複雑になり、余計なコストが掛かるようになる。

また、形式的に必需品扱いをして、課税から逃れようとするインセンティブが働くことも考えられる。

更に、そうした複数税率の取り扱いが、本当に公平なのかについても疑問である。というのは、所得水準の低い人々が、どのような財・サービスを生活必需品として、相対的に多く消費しているのかは特定しにくい。特に、わが国のように、経済全体が豊かになり、相対的に低所得の人々でも様々な財・サービスを消費している場合に、消費する財サービスの種類で必需品や贅沢品を定義するのは無理になっている。


問い⑧
・バローの中立命題がリカードの中立命題よりも、現実的であるのは、どのような点か?

公債発行と公債償還とが、世代の枠を超えてなされるときでも、公債の中立命題が成立することを示した点である。


問い⑨
・公債の中立命題が成立したとすると、財政赤字については、どのような政策的意味を持っているのか?

財政赤字のマクロ的な効果はなくなる。


問い⑩
・わが国のみならず、多くの国で、高齢者への再分配政策が盛んなのは、なぜか?

多くの国では、高齢者に対する再分配政策は、貧困者に対する再分配政策よりも、好意的に受け止められている。誰でも、高齢者になれば、受給者になれるので、負担と受益との間に一定のリンクを想定できるからである。

しかし、貧困者に対する再分配政策の場合、受益者と高齢者は別々の個人であり、相互にあまり関係しない。福祉政策の財源を負担する高額所得者は自分がその受給者になるとは考えない。その分だけ、両者の間に距離感があると、政治的にそうした再分配政策は長続きしにくい。

高齢者への社会保障では、その制度に対して勤労期にすでに保険料(一部ではあっても)拠出しているために、高齢者は給付を授権と見なしがちである。その結果、高齢者への社会保障は福祉政策と比較して、強い継続性を持つことになる。


問い⑪
・公債発行が経済を刺激し、税収を増加させるメカニズムは、現実には、財政破綻を回避するほどではないという。その理由は何か?

公債を発行すると、将来にわたって、その利払いが増加するからである。この利払い増よりも税収増が大きくなって初めて、政府の予算制約が均衡に落ち着くのである。そのためには、公債残高の消費に対する資産効果は、あるとしても、実際には、それほど大きいものとは思われない。とすれば、公債発行それ自体が税収増をもたらす可能性は、現実の政策論としては、あまり重要でないだろう。


問い⑫
・経済が成長すれば、公債発行をどんどんし続けても、なぜ、財政破綻にならないのか?

経済の規模が拡大すれば、公債をどんどん発行しても、相対的な公債の規模は縮小しうる。長期的には、利子率が、経済成長率よりも小さければ、そうした状況が実現する。


問い⑬
・公債のクッション政策の直感的な意味を述べよ?

外生的なショック(例えば、石油ショックや戦争など)のために、税収や政府支出は短期的に変動するかもしれない。税率を短期的に大きく変動させると、超過負担が大きくなってしまう。公債発行は、景気後退、政府支出の一時的な拡大などの外生的なショックを吸収するように、クッションとして変動すべきであるとの主張である。


問い⑭
・「非ケインズ効果」とは何か?

いわゆる「非ケインズ効果」とは、現時点の財政支出が非効率である場合や税負担が将来に先送りされている場合等、一定の財政状況や経済環境の下で、歳出削減や増税がむしろ民需の自立的な回復をもたらすことを意味する。こうした状況では、財政再建と景気回復という2兎を同時に追うことが可能になる。これまでの実証分析によれば、財政赤字や政府債務残高が一定の水準以下に収まっている「平時」では通常のケインズ効果が観測されるが、財政赤字や政府債務残高が一定の水準を超えた「非常時」には政府支出の増加や減税が民間消費の減少をもたらすという非ケインズ効果が認められる。


問い⑮
・課税ベースが事前的には、弾力的で合っても、事後的に非弾力的になる例としては、どのようなものがあるのか?

既に蓄積された資本に対する課税や、既に発行された公債残高に対するインフレ課税。


問い⑯
・時間に関する非一貫性の観点から、資本所得税の問題を考えると、なぜ信頼の問題を引き起こすのか?

政府としては、常に、事後的に資本所得税を引き上げる誘引を持つ。事前と事後の貯蓄の弾力性が異なる限り、事後的に資本所得税を上昇させることは、人々の効用水準を増加させるのである。

しかも、もしこれを人々が前もって、知っていれば、即ち、実際に、第2期になると、第1期に政府が約束している以上の税率で、資本所得税が課せられると予想する場合には、貯蓄はそれに対応して、減少し、第2期の課税ベースも減少する。このとき、労働所得に対して、大きな税率を課せられることになり、結果として、事前的な意味での最適な課税の時よりも、効用は現象してしまう。


問い⑰
・足による投票のもたらす効果について説明せよ?

住民が自ら最も望ましいと考える税負担と公共サービスの組み合わせを選択すると、2つの効果が期待できる。

第1は、各地方政府が、公共サービスを効率的に供給するようになる。同じ税負担であれば、より質の高いサービスを供給している地方政府が評価されるので、各地方政府間での競争により、効率的な公共サービスの提供がなされる。

第2は、同じ選好を持つ住民が同じ地域に集まるようになる。年齢、人種、収入などに応じて住民のタイプが大まかに分類されるとすれば、そうしたタイプの似通った住民が同じ地域に移住するようになる。


問い⑱
・地方分権における「三位一体」改革について説明せよ?

2003年に小泉内閣ではじまった「三位一体」の改革では、地方政府の自主的な自助努力を重視して、地方政府が財政面でも自立した運営が行えるように、

① 国からの補助金を整理、廃止
② 交付税の抜本的改革
③ 国税からと地方税への税源の委譲という3つの改革が、一体として実施されることになった。

「三位一体」改革とは、こうした3つの改革を同時に進めて、地方分権を財政面から、支えることで、中央政府が地方政府を指導・管理・監督する度合いを少なくしようとするものである。地方分権の改革を成功させるためには、まず、中央政府の財政面での守備範囲を限定し、同時に、地方政府の財政状況に関わらず、その守備範囲を維持することが重要である。そうした中央政府のコミットメントに信頼性が確立されて始めて、地方政府に自助努力を求める地方分権は意味のあるものになる。

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