2008/01/29

テストまで、残り7日

問い①
・ケインズ的な考え方が、なぜ、福祉国家を目指す思想と結びついたのか?

失業の防止を政府の義務の1つに掲げたケインズ主義は、失業を非自発的失業と見なすことによって、失業者を自らの責任でないにもかかわらず苦痛を背負わされた存在と見なした。これは、個人主義=自主自責・自助努力の原則に修正をもたらすものであり、政府主導型の社会保障の思想に一つの根拠を与えるものである。


問い②
・公共部門が期待される3つの機能の中で、最も重要なものはどれか?

資源配分機能、所得再配分機能、安定化機能のいずれも重要な機能であり、どれが最も重要かは人によって解答が異なる。標準的な財政学では、資源配分機能を最も重視している。これは、市場メカニズムを是正することが、政府の基本的な役割と考えているからである。所得再配分については、どこまで政府が介入すべきか公平性の価値判断に依存する点も多く、又、安定化機能についても、中長期的には、市場の調整機能を重視すべきであるから、これら2つの機能は限定的に考えることができる。


問い③
・財政政策を評価する際、なぜトレード・オフ関係が重要となるのか?

政策の評価は、通常2つ以上の目標に関して行われる。全ての目標を同時に、改善するような政策手段は、現実にはありえない。あちらを立てれば、こちらが立たないという状況が普通である。このようなトレード・オフ関係にあるとき、その内、どこを選択するかは、経済学の枠の中では何ともいえない。ここに、価値判断の重要性が生じる。


問い④
・わが国の財政システムの中で、中央政府の果たしている役割について?

中央政府では、直接税、間接税等の形で経常収支を得る一方で、自ら行政サービスをすると共に一定の政府支出活動を行う。また、経常段階で地方政府に対しては地方交付税交付金、各種補助金などを、社会保障基金に対しては社会保障特別会計等への繰り入れ(公的年金や医療保険に対する国庫補助金等)などを行っている。さらに、公的企業に対しては、財政投融資を行っている。


問い⑤
・予算編成の中で、特に重要と思われる作業は何か?

各省庁の概算要求に基づき、財務省が原案を策定する作業が、特に重要である。税制改正や歳出全体の伸び率、公債依存度などの重要な指標を判断の根拠としながら、全体としての数字が策定される。マクロ経済の見通しが重要な意味を持つのは、翌年度の予算における税収の見積もりに関してであり、仮に翌年度の経済成長率が高いと予想されれば、税収の伸びが高くなり、予算案全体に積極的な編成方針が採られやすくなる。

問い⑥
・シーリング方式という予算編成の問題点は何か?

歳出面での具体的な抑制方式としてわが国で採用されているのが、シーリング方式である。

これは、各省庁が予算要求をする場合に、前年度の支出の総額に対して一定の伸び率(あるいは削減率)での総枠をあらかじめ設定して、その枠の中での概算要求のみを認めるというものである。

したがって、全ての歳出項目にゼロ・シーリングが設定されれば、最大限でも翌年度の歳出総額は本年度と同額までしか増えない。

しかし、現実には全ての項目についてシーリングが設定されているわけではない。経常的な経費と投資的な経費とが区別されるケースが通常であるし、又、制度上、あるいは、政策的に増額されるものについては例外扱いにある場合も多い。又、これは当初予算についてのみ当てはまる編成方針であり、補正予算には適用されない。

当初予算では歳出が抑えられていても、その後の景気対策などの名目で、大幅に歳出の増加が認められた予算もある。特に、1990年代に公共事業について補正予算で大幅な追加が取られたように、シーリングは必ずしも有効に機能しなかった。

シーリングの対象は、既得権益に乏しい一部の支出に限定されていた。


問い⑦
・財政投融資は、なぜ、第2の予算と呼ばれるのか?

財投計画は、予算と密接な関係をもちつつ、予算ではコントロールされない国の資金の運用を決めるものであるから、第2の予算と呼ばれている。


問い⑧
・ナッシュ均衡では、なぜ、公共財が過小にしか、供給されないのか?

ナッシュ均衡では、人々が追加的に公共財を供給する時、公共財の限界的な費用を自らの負担でまかなわなければならない。ところが、公共財の限界的な便益は、その外部性のために、他人にも及ぶ。自らの限界的な便益のみを考慮して公共財の追加的な供給を決める以上、他人に与える便益が考慮されず、その分だけ過小供給になる。


問い⑨
・リンダール均衡でサムエルソンの公式が成立するのは、なぜか?

リンダール均衡では、各個人に割り当てられた個別化された価格の合計が、公共財供給の限界費用に等しくなっている。各個人は公共財の限界評価が、個別化された価格と一致する水準の公共財の量を政府に表示するから、その合計額は公共財の限界評価の総和になる。したがって、サムエルソンの公式が成立する。


問い⑩
・公共財の最適供給条件であるサムエルソンの公式を、私的財のみの世界の最適条件と対比させて、その経済的な意味を述べよ?

サムエルソンの公式は、経済的には、公共財からの社会的便益と社会的な限界費用の均等を意味する。私的財の場合には、社会的な便益は、私的な便益と一致しているが、公共財の場合には、すべての個人に与える便益の総和が、社会的な便益となる。


問い⑪
・なぜ、公共財の場合、私的財の場合よりも、ただ乗りが問題になるのか?

一つには、経済主体の数という要因が挙げられる。即ち、私的財の場合には、ただ乗りの利益が均衡価格の変化を通じて他の経済主体にも及ぶため、経済主体の数が多くなると、各個人にとってただ乗りする誘引は減少する。したがって、経済主体の数が多い完全競争に近い経済では、公共財の場合のほうが、よりただ乗りの可能性が現実的な問題として生じる。

もう一つの要因は、公共財の場合、各個人が公共財から得る便益を政府に表示する状況が多いと考えられる。即ち、私的財の場合には、各個人が明示的に自らの選好を表示する機会はあまりなく、各個人は所与の市場価格の元でどれだけ購入するかの数量の選択となるのに対し、公共財の場合は、その公共財計画に対する各個人の評価を明示的に表示するケースが多く、その場合には、ただ乗りの誘引が働きやすい。


問い⑫
・最適な政府支出は、どんな状況で拡大するのか?

政府の介入がないときの市場メカニズムの問題点を示す市場の失敗の程度が大きいほど、効率性の観点からの政府支出の最適規模が大きくなり、そして、政府の介入がないときの経済格差が大きく、社会的価値判断が公平さにより関心を向けているほど、公平性の観点からの政府支出の規模が大きくなる。さらに、政府の介入がないときの市場の調整メカニズムが緩慢であり、外的ショックが大きいほど、マクロ経済活動の安定化のための政府支出の最適規模は大きくなる。


問い⑬
・最近では、企業年金などの私的な年金も利用できる。それにも関わらず、公的年金が必要な理由を述べよ。

私的年金は積み立て方式であるから、世代間の再分配には無力である。世代間での再配分政策が社会的に必要であれば、賦課方式による公的年金は、望ましい。又、私的年金の場合には、任意加入であるから、年金に入る人は、それなりに、将来のことを憂慮し、また、経済的に恵まれている場合が多い。公平性の観点からは、将来のことを考慮しない、あまり経済的にも恵まれていない人も加入させるのが望ましい。それには、強制加入である公的年金が適している。


問い⑭
・国際テロ対策として、どのような支出が効果的か?

最初の対策としては、テロからの攻撃を受けた場合に対処できるような支出が必要である。例えば、警察力の増強や、危機管理対応施設の増強などが考えられる。しかし、テロに対しては、抜本的な解決が求められる。テロの温床として考えられる、貧困地帯における問題に如何に取り組んでいくかという点がより重要になってくるだろう。これについては、ODAなどで経済開発支援などを行い、貧困を撲滅する努力が求められる。ところが、このような問題の解決には、長い時間を要することが十分に予想される。日本の国内財政事で、このような活動が影響を受けるのは望ましくない。政府は、国際的な枠組みで、このような協力を持続的に続けていくことを決め、そして取り組んでいくことが求められるのではないか。


問い⑮
・費用=便益分析を公共投資計画に適用するときの、メリットとデメリットを述べよ

メリットは、公共投資の決定が、客観的な数字に基づいて行われ、ともすれば、地域的な、又、近視眼的なバイアスをもつ政治的な圧力に左右されないことである。デメリットは、便益の推定が困難であること、および、割引率として何を用いるのか決めるのが、困難であることである。


問い⑯
・政府は、なぜ、失敗するのだろうか?政府の失敗をなくすことはできるのだろうか?

政府は、情報の不完全性や経済構造に対する理解不足などのために、当初の目的を達成できないこともある。まして、現実には政府は多数党によって支配されるから、政治家や官僚、様々な圧力団体の利害も反映している。政府の失敗を少なくするためには、政府行動に関する情報を公開し、国民の監視を強めると共に、市場メカニズムが活用できる分野については、民営化することが必要だろう


問い⑰
・1980年代に入って、わが国のみならず、アメリカやイギリスで、小さな政府への動きが現実のものになってきた理由を、説明せよ。

1970年代までの大きな政府への動きによって、負担が拡大して、その弊害が大きくなったこと、および、人々の選好が多様化し、準公共財が増えるにつれて、多くの人にとって、受益より負担の方が大きくなったことなどが上げられる。


問い⑱
・民営化のメリットと、デメリットを述べよ

民営化のメリットは、より効率的な資源配分が可能となること、又、デメリットは、公平性の観点からは、社会的に望ましいけれども、採算が取れないで切り捨てられるサービスが問題になることであろう。


問い⑲
・わが国の政策金融機関の改革について?

1990年代、民間金融機関の安全志向の高まりと、公的部門の肥大化は資金の流れを大きく変化させた。

これに対して、小泉内閣では、財政投融資改革の実施を受け、特殊法人改革と共に、2002年度からは政策金融改革にも着手した。家計の郵便貯金・簡易保険の保有残高は2001年から減少し始めた。また、どう期間に郵便貯金・簡易保険の国債・地方債・財投債の保有残高も低下した。

それを受け、政策金融機関や特殊法人への貸付残高も低下した。しかし、この間に民間企業の預金は増大しており、こうした資金余剰の現状を踏まえるならば、政策金融機関の役割や規模など、多くの問題点について本格的に見直すことが早急に必要である。

経済財政諮問会議は、2002年に政策金融改革の基本方針を提示し、改革達成への道筋やあるべき姿の実現プロセスを取りまとめた。

それによると、民間部門の自由かつ、自発的な活動を最大限に引き出す方向で改革を行い、金融資本主義の効率化を図るとされた。政策金融が必要な条件は、政策的助成により「高度な公益性」が発生し、しかも、金融機能面にける「リスク評価等の困難性」が大きい場合に限定される。さらに、2005年11月に政府は政策金融改革の基本方針を決定して、2008年度から新体制に移行すべく、抜本的改革を行うことを決めた。それによると、今後の政策金融は以下の3つの機能に限定し、それ以外は撤退することになる。

① 中小零細企業・個人の資金調達支援
② 国策上重要な海外資源確保、国際競争力確保に不可欠な金融
③ 円借款(政策金融機能と援助機能を併せ持つ)


今日は以上。。。

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